日常生活の中で、鏡の前に立った時に首が短く見える、肩がもり上がっているように感じることはありませんか?これは「もっこり肩」と呼ばれ、首から肩にかけてのラインが膨らみ、首周りの見た目を損ねてしまう状態を指します。特に首回りがあらわになる服を着ると、その目立ち方に悩む方が多いものです。
もっこり肩は実はよくある姿勢の乱れが原因で起きており、首や肩のコリ、さらには見た目の太見えや老け見えの原因にもなります。ここでは、そのメカニズムと、理学療法の視点から誰でも自宅でできる簡単なストレッチ3種類をご紹介します。
もっこり肩の原因とは?
姿勢不良が最大の要因
もっこり肩の一番の原因は、日常の姿勢、特に「猫背」と「巻き肩」です。猫背は背中が丸まり頭が前方に出る姿勢で、巻き肩は肩が前に内側に捻れた状態です。この姿勢を続けることで、首から肩にかけて『僧帽筋』という筋肉の上部が常に引っ張られ、筋肉が盛り上がってしまいます。
僧帽筋の役割と影響
僧帽筋は首の後ろから肩、背中にかけて広がる筋肉で、上部・中部・下部に分かれます。もっこり肩の主な原因となるのは、特に僧帽筋の「上部繊維」部分です。上部繊維は首の後ろ(頸椎付近)から肩の外側(鎖骨の外側1/3)まで広がっており、巻き肩になるとこの部分が常に緊張しやすくなります。
このため、筋肉が盛り上がり、首回りが短く見えたり肩周辺が太く大きく見えたりしてしまうのです。
もっこり肩を放置するとどうなる?
もっこり肩は見た目の問題だけでなく、健康面にも影響を与えます。
肩こりや首こりの原因に
上部僧帽筋の緊張は持続的な負荷となりやすく、肩こりや首こりの原因となります。常に筋肉が引っ張られているため凝り固まりやすく、痛みや違和感が慢性的に生じることがあります。
首が短く太って見える視覚効果
巻き肩や猫背姿勢は頭が前に出て肩が内側に捻れているため、視覚的に首が短く太く見えてしまいます。さらに肩や背中が広くなって見えるため、体全体が太って見えやすく、デコルテが綺麗に見えないなどファッション面でも悩みの種となります。
理学療法士直伝!もっこり肩に効くストレッチ3選
もっこり肩を改善するためには、巻き肩や猫背を正し、僧帽筋上部の緊張を緩和することが大切です。ここでは自宅で気軽にできる理学療法の観点から考案された簡単なストレッチをご紹介します。
① 大胸筋ストレッチで巻き肩をゆるめる
巻き肩は胸の前の筋肉(大胸筋)が縮こまることで起こりやすくなります。胸を開き大胸筋を伸ばすことで、肩が自然と開きやすくなり、僧帽筋上部の負担も減ります。
手順:
1. 壁の前に立ち、肘と肩を90度に曲げて壁に当てます。
2. そのまま身体を壁に向かって少し前に出していき、胸の前が伸びているのを感じましょう。
3. じんわりと心地よい伸びを感じながら30秒〜1分キープします。
注意点:痛みが出るほど強く押し付けないこと。呼吸を止めずにゆったりと行いましょう。
② ラットプルダウン風ストレッチで肩甲骨を引き寄せる
巻き肩姿勢は肩甲骨が外に広がり、肩が内旋しています。肩甲骨を後ろで寄せ合うイメージで動かすことで、僧帽筋中部や菱形筋が働き姿勢改善に繋がります。
手順:
1. 両手をはの字に広げて上げます。
2. 肘を曲げながら脇を締めていくイメージで肩甲骨を身体の後ろで寄せ合います。
3. 視線は前方に保ちながら、肩甲骨がしっかり寄り合っている感覚を味わいましょう。
4. この動きを10回ほど繰り返します。
注意点:動作はゆっくり丁寧に、痛みを感じたら中断してください。
③ 背中のストレッチで僧帽筋上部の緊張をほぐす
首の後ろから肩にかけての筋肉は、背中の使い方とも密接に関係しています。手を後ろで組みながら背中を伸ばすことで僧帽筋の伸張と肩の可動域を広げられます。
手順:
1. 背中の後ろで手を組みます。
2. 肘をまっすぐ伸ばしながらゆっくり持ち上げていきます。
3. 胸を張りながら背中の筋肉が伸びるのを感じましょう。
4. 視線が下に落ちないよう、顎を引きすぎず自然な位置に保ちます。
5. 30秒間キープしたらゆっくり手を下ろします。
注意点:肩甲骨や肘に痛みがあれば無理せずに行ってください。
もっこり肩を予防・改善するためのポイント
良い姿勢を保つこと
長時間のデスクワークやスマホ操作は猫背や巻き肩を引き起こしやすく、もっこり肩の原因となります。こまめに姿勢を正し、背筋を伸ばし肩を自然に後ろに引く意識を持ちましょう。
筋力バランスを整える
胸の筋肉が硬くなっている一方で、背中の筋肉が弱くなっている場合が多いので、ストレッチだけでなく背中のトレーニングも行いましょう。こうした筋肉バランスを整えることが、もっこり肩の根本改善に繋がります。
正しい呼吸を心がける
巻き肩や猫背は浅い胸式呼吸になりがちです。腹式呼吸や横隔膜呼吸を取り入れて深く安定した呼吸を行うことで、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。
まとめ
首の見た目をすっきりと魅せる「もっこり肩」は、多くの場合悪い姿勢が原因で起きています。僧帽筋の上部繊維が過剰に緊張してこり固まることで筋肉が盛り上がり、首が短く太く見えてしまうのです。
今回ご紹介した大胸筋のストレッチ、ラットプルダウン風の肩甲骨寄せ、そして背中の伸ばしストレッチを日常的に行うことで、肩の緊張を和らげ正しい姿勢づくりをサポートします。姿勢改善と筋肉のバランス調整に努め、すっきりとした首元を取り戻しましょう。
無理なく継続することがポイントですので、毎日のルーティンに取り入れてみてください。健やかな首・肩のラインは、見た目の美しさだけでなく快適な日常生活にもつながります。









